5)かすがい-山ちょこへの道-

初デートで一生の思い出を作った私たちは、建築を通して絆を深めていきました。
デートは建築を見に行くか資格の勉強、それぞれ勤めていた設計事務所で抱える業務を助け合い、結婚してからは友人を始め多くの方々のマイホームを二人で手掛けました。
貴之は住宅ローンの手配から確認申請業務に現場監督と、持ち前のホスピタリティでなんでもこなし、私は設計デザイン業務を担当。
こう書くとどんだけ仲良しなんだと思われるかもしれませんが、実際は趣味も性格もバラバラ、大学のスクーリングも日程を合わせて一緒に――なんてことは一度もしたことがなく、自由を愛する私たちが繋がっていられるかすがいの役割を担うのが建築だったのです。
お施主様や業者さんたちに育てられながら建築の仕事をこなすうち、自分達でも道具をふるい造りたいと思うように。
そこで貴之は本格的に職人の世界へ身を置くことを決めました。
そんな頃、なんだかよくわからない体調不良を感じていた私は、ある日突然倒れてしまうのです。

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